日箱

日常を箱につめる作業

【レビュー】イキルキス - 舞城王太郎

舞城王太郎は「好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)」のタイトルが気に入ってて、読みたいなーと思いつつも手に取ったことの無かった作家なんですが、以前古本屋で見つけて購入し、非常に良かったので、その流れで購入。タイトルの「イキルキス」で全く内容が想像もつかないところが良いですね。

本作は、5編の短編集(というか、2つの中篇と3つの短編といった感じですが)。タイトルの「イキルキス」は地方都市で起きた子供たちの不可解な死亡事件にまつわる話。登場人物を全部大学生とかに変えて「やれやれ」とか言わせれば、村上春樹っぽさでてくるなーなどと思いつつ。

2話目と3話目はどちらも破壊と再生の物語。この人の書く文章は、時々めっちゃ読みづらかったり、理不尽な暴力描写も多く、あんまり読んでて心地よいものではないことも多いけど、続きが気になってついついページをくってしまう。

4話目の「アンフーアンフー」は乙一とか三崎亜記を思い起こさせるようなダークファンタジーさのある作品。

個人的に一番好きだったのは最後の「無駄口を数える。」かな。主人公の言い訳がましさ、自分はこういう人間だから仕方ない、自分は自分なのだ、と割り切っている感じとかが凄くよくわかる。愚痴とか反省とかそういうのが結構続くのだけれど、それは多分口にしていて自覚しているだけのことで、結局この人は何時までも何も変わることのない人間なんだろうな、と思う。何かが起きれば、それを「何か」として、そのまま受け入れる。根本的なところで、別に人からどう思われようが構わないし、理解されようとも思わない、自分が自分であればそれで良い。

まぁ、そうやって生きてきた人間は、そうやってしかこれからも生きていけないんですよね・・・。ほんと・・・。よくわかる。